プロの仕事に立ち戻る時期
編集 前回、時代や消費者の飽きに対応しきれていないお店が多いとありました。ぜひ中島流の指南をお話いただきたいのですが。
中島氏 外食が特別なことではなくなり、高級・フォーマルよりも庶民的な感覚のお店のほうが好まれる時代になっていると思います。
けれどもお客様は、自分の存在を認識してくれるお店のほうが絶対にいい。毎回「いらっしゃいませ、何人様ですか?」より「○○様、こんにちは」と言ってくれたほうが居心地がいいでしょう?物販じゃないんだから、プロの仕事というのをもう一度見直す時期だと思います。
編集 例えばチェーン店などでいうと、一生懸命に頑張っているアルバイトでもいずれ辞めていき人が変ります。社員比率を上げていくとか?
中島氏 いや、しっかりとした社員が1〜2名いて、プロの仕事をしてくれればそれだけで充分変ると思いますよ。やはり1000円、2000円以上いただくからには、人間関係でまた来たいなと思ってもらわないとね。「このお店、なんか勘所がいいな」という印象は、サービス業には欠かせないことだと思いますよ。
編集 画一的なサービスも問題だというお話もありましたね。
中島氏 挨拶しているだけ、ひざまずいて目線を合わせているだけというか…。そんなのいいから早く注文とって持って来て、ってことあるでしょう?お客様は「決まりだからそうする」ものは欲してない。精度のいいサービスがあった時「おっ、ちょっといいね」と思う。やはりここも既成概念をもう一度見直して、本来のプロの仕事というのを現場でやっていかないといけないと思いますよ。
編集 お客様が本当に求めているもの、ですね。
中島氏 そう。でもここで間違ってはいけないのはね、お客様のためが一番に来るとダメなんです。私たちは“したたかにタフ”に生き残っていかなければならない。だから自分たちのためにやるんです。それが結局はお客様のためになっている。ここを間違えるとコスト面などの現実的なことも含めてお店は続かなくなる。
編集 面白いお話ですね。でも、言われてみればそうですよね。
中島氏 お客様の姿が見えなくなるまでお見送りするオーナーがいますね。あれ、なんでしょうね?お客様のためですか?そうとも言えるけどお店のPRのためですよね。いい仕事をしてお金を得たいから心を込める。それがプロの仕事です。
継続的なリノベーションこそが生き残る道
編集 変化への対応ということで前回面白い話がありました。社内に「再生チーム」を常設しておいて、継続的にリノベーションをやり続ける、と理解しましたが。
中島氏 そうです。行き詰まった時にバタバタするんじゃなく、常に消費者の飽きや時代の変化を捉え、新しい取り組みを率先して行う機能を持たせておくということです。僕たちがいちばん怖いのは「あの会社終わったね」と言われること(笑)。そうなる前に先手先手を打っておく。そのための組織というか位置付けです。
編集 一企業という括りだけでなく、業界全体で苦しんでいる会社を再生しようとする動きもあるんですよね?
中島氏 業態業種を越えたネットワークを作り、知恵のある人は出し惜しみしないで周りを助けてあげようよ、というね。
現在すでに、ある飲食大手の再生事案をやっているんですよ。商品、サービスの分析や顧客心理の調査をし、軌道修正するためのアイデア出しを行い再生に乗り出している。今は事務局レベルでやっていて、どのような組織・協会にしていくかは検討中なのですが、今後苦しくなる企業は多くなると思うし、そんな時に「助けて!」と言えるように組織化するつもりでいます。
編集 ありがとうございます。最後にみんなが元気になるようなメッセージをいただければと思いますが(笑)。
中島氏 定番がいいと言いながらただの定番では納得しない。自分たちがそういう顧客であるように、お客様とはそういうのもです。だから変化に合わせて変えなくちゃいけない。「これが正解」というのがなくて本当に難しいことだけれど、プロとしてどうすべきか原点に立ち帰って考える時期が今なのだと思います。過去の成功体験に縛られないで、フラットな状態で物事を見てみる、顧客の視点で本当のニーズを探ってみる。突き詰めていけば、私たちは必ず新しいものを生み出せる。そう思いますよ。