石田 僕が今考えていることは、ある程度キャリアを積んだ人たちが、次に何を望んでいるのか、ってこと。若い子なら、いろんな経験をたくさんしてもらって、技術を教えるってことに尽きるんだろうけれど。30代、40代はそうはいかない。新川さんはそういう人たちをどう育てているんですか?
新川 永遠のテーマだよね、それ。俺も会社立ち上げて3年なんで、たいしたことは言えないけれど、会社設立した時、“スタッフが辞めない会社”を作ろうと決心したのは確か。
だいたいね、伸びたいやつは2種類しかいない。一つは独立して経営したい、企業のトップになりたいというタイプ。もう一つは、好きなことを追求し続けたいタイプ。こういう専門職の人たちをどう伸ばしていくかって、大事なんだよね。彼らには足跡を与えなきゃなんないし。
石田 たぶん新川さんと僕の考えは似ていますね。専門職の人たちが、将来独立したいかというと、そうとも限らないしね。
会社としては、ゼネラリストもスペシャリストも必要。どういうタイプの人材かを見極めて採用しないと。そしてどっちのタイプの人でも活躍できる場を用意しないとね。その点、新川さんのところは、カジュアルな店もあるし高級店もあるしで、いろんな活躍の場がある。
新川 まぁ、個人の力量にもよるけどね。ところで今年の新卒、採った?
石田 4人採用しました。中途者に比べ新卒者は、彼らの可能性・成長を大いに期待する、いわばその未知数に賭けるといっても過言ではないですね。
新川 そうだね、新卒者だと、知識とか経験とか、まったくない人もいるってことだもんね。それを4人とは、すごいね。実はね、聡のところで新卒採用をやっているっていうから、俺もやりはじめたのよ。
石田 そうなんですか?中途の人だと、「とりあえず明日から来てくれ」って言ったら、すぐに来てくれるけれど、あさってには辞めちゃう確率も高い。就職を真剣に考えていない人が多いのかもしれませんね。
新川 もちろん、そういう人ばかりじゃないけれど、同感だね。そういう傾向は否めない。
組織論で言うと、“叩き上げ”だけで組織を作ると、同じ穴の狢になっちゃう。組織には常に客観的に見てくれる人も必要。5年後、10年後の会社を真剣に考えてくれるのは、中途者より新卒者。真剣の度合いが違うからね。
でもそうは言っても、実力主義の会社だと、ナレッジのない新卒者はたいてい潰されちゃう。新人の失敗を店長がかぶって、下手すりゃ、店長のボーナスカットってことも…。だから自分たちがかわいいんだったら、明日から即戦力として活躍してくれる中途者を採用しよう!ってことになる。人件費もかからないしね。
だから今回、僕は店長たちに聞いたんだ。「ちゃんと育てられるのか?」って。そしてら「できる」って言うから、1店舗で二人、5店舗あるから計10人の新卒採用にGOサインを出した。
石田 そうですよね。新卒者を採用するには、まず内部統制からはじめないと。実力主義だったらなおさら、将来のサラブレッドが潰されちゃいますからね。業界特有の陰気な風習をまず変えないとね。「期待もしながら、でも負けねぇぞ!」って、中途者には新卒者を見守る余裕も必要ですよね。