第42回 株式会社バックパッカーズ 代表・佐藤卓さん
キャンプスタイルでカレーを食べるユニークな店がある。「野菜を食べるカレー camp」だ。看板メニューは野菜が鉄板に山盛りの「1日分の野菜カレー」。お冷は水筒で用意され、フォークなどのテーブルセットは、なんと、飯ごうに入れてある。そんな遊び心満点の「camp」の店主・佐藤さんは独特のオーラを放つ。日産自動車の若きエースとして活躍しながらも、30代で退職して飲食業界に転向。彼を飲食の世界に駆り立てたものは何だったのか…。
1967年、埼玉県生まれ。
中央大学法学部法律学科卒業後、91年、日産自動車株式会社に入社。98年から2002年まで、日産・ノースアメリカ社での海外勤務を経て、04年2月退職。同年3月より株式会社スマイルズで約2年半勤務し、「トーキョールー」ルミネ新宿店店長などを務めたのち、07年3月、東京・代々木に「野菜を食べるカレー camp」を開業。2010年8月には、ライセンス店舗としてJR池袋駅構内に「野菜を食べるカレーcamp express」をオープン。
野菜を食べるカレー camp 代々木本店
住所 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-29-11 B1F
TEL 03-5411-0070
営業時間 11:30〜22:30
定休日/日曜
規模/10坪18席
住所 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-29-11 B1F
TEL 03-5411-0070
営業時間 11:30〜22:30
定休日/日曜
規模/10坪18席
日産自動車のエースとしてアメリカで活躍
僕は日産自動車での勤務が長く、約13年間働いていました。30歳のときには、当時で最年少で、アメリカのカリフォルニア州に転勤が決まり、約4年間を海外で過ごしました。サラリーマンとしてもっともあぶらがのっていた時期でもあり、この会社で頂上まで昇りつめようと思っていました。だからまさか将来、飲食業をやるとは思っていませんでした。
アメリカでの生活は僕には水が合っていて、アメリカ人との付き合いも心地いいものでした。アメリカ人は皆、自立志向が高く、会社員であっても“手に職を”という人が非常に多く、また、自分の家系への関心もとても高いんです。日本と違って、アメリカでは4代も遡ればほとんどが海外からの移民です。学も金も何もないままに太平洋の彼方まで来て、子孫を残していったご先祖のことを尊敬し、自分も何か成し遂げたいと考えている人が多いように感じました。
そうした中で、“自分の人生はどうなんだろう?”“いつか曾孫とかが自分のことをすごい存在だと思ってくれるのか?”と考えるようになりました。それまで、高校、大学、就職と順調な道を歩んできたのですが、アメリカ人の考え方に感化され、人生を冒険してみるのも楽しいかも…と思ったのです。
帰国後は商品開発室に2年間在籍し、日米特許も取得しました。さらに退職後は「スープストック」を展開する株式会社スマイルズに入社しました。飲食業はど素人だったので、ここでは飲食の基本から大手ならではのオペレーションなどを学びました。
アメリカでの生活は僕には水が合っていて、アメリカ人との付き合いも心地いいものでした。アメリカ人は皆、自立志向が高く、会社員であっても“手に職を”という人が非常に多く、また、自分の家系への関心もとても高いんです。日本と違って、アメリカでは4代も遡ればほとんどが海外からの移民です。学も金も何もないままに太平洋の彼方まで来て、子孫を残していったご先祖のことを尊敬し、自分も何か成し遂げたいと考えている人が多いように感じました。
そうした中で、“自分の人生はどうなんだろう?”“いつか曾孫とかが自分のことをすごい存在だと思ってくれるのか?”と考えるようになりました。それまで、高校、大学、就職と順調な道を歩んできたのですが、アメリカ人の考え方に感化され、人生を冒険してみるのも楽しいかも…と思ったのです。
帰国後は商品開発室に2年間在籍し、日米特許も取得しました。さらに退職後は「スープストック」を展開する株式会社スマイルズに入社しました。飲食業はど素人だったので、ここでは飲食の基本から大手ならではのオペレーションなどを学びました。
アメリカ進出を視野に入れて開発した「炒めるカレー」
独立するのに飲食業を選んだのは、食べるのがすごく好きだったから。在米中は同僚に「ザガット」と呼ばれていて(笑)、顧客に飲食店ガイドを作って渡したり、人気の飲食店について記者が取材に来ることもありました。
最初は、将来的にアメリカに出店することが目的でした。寿司や天ぷらはもうアメリカでも市民権を得ていたので、それ以外の日本独自の食べ物で、わかりやすいカタカナ表記で、外国人から見ると驚くような食べ物を…と探して行きついたのが、カレーととんかつでした。
なかでもカレーは、「聞いたことはある」という程度で、食べたことのないアメリカ人が多かった。インドカレーの専門店はあっても、日本のカレーはほとんどありませんでした。そこで、“アメリカ人に受けるカレーとは何か”を考えて、寿司や鉄板焼きなどアメリカで受けている日本料理を見てみると、ある共通点が見えてきたんです。それが、「camp」のコンセプトでもある「野菜(ヘルシー感)」と「ライブ調理(エンターテイメント)」です。
開業前に日本のカレー専門店をいくつか食べ歩いたのですが、注文を受けた後に裏でご飯をよそって出すので、お客への安心感やライブ感に欠けている店が多いと感じました。また、見た目からもヘルシー感があまりないことを感じました。
しかし、カレーが茶色くてとろっとしているのは、野菜を炒めてスパイスと煮込んだもので、本来、カレーは野菜を食べるヘルシーな料理なはず。そこで、胃にもたれないように脂を減らして、調理の順番も入れ替えて、本来は最初に行なう“炒める工程”をお客様に見せるような今のスタイルに編み出したのです。つまり、煮込むカレーではなく、注文が入ってから野菜を炒め、そこにカレーソースを加えて軽く煮て、グツグツ煮えた状態で提供するのです。こうした斬新な発想は、飲食経験がないからこそできたのだと思います。
最初は、将来的にアメリカに出店することが目的でした。寿司や天ぷらはもうアメリカでも市民権を得ていたので、それ以外の日本独自の食べ物で、わかりやすいカタカナ表記で、外国人から見ると驚くような食べ物を…と探して行きついたのが、カレーととんかつでした。
なかでもカレーは、「聞いたことはある」という程度で、食べたことのないアメリカ人が多かった。インドカレーの専門店はあっても、日本のカレーはほとんどありませんでした。そこで、“アメリカ人に受けるカレーとは何か”を考えて、寿司や鉄板焼きなどアメリカで受けている日本料理を見てみると、ある共通点が見えてきたんです。それが、「camp」のコンセプトでもある「野菜(ヘルシー感)」と「ライブ調理(エンターテイメント)」です。
開業前に日本のカレー専門店をいくつか食べ歩いたのですが、注文を受けた後に裏でご飯をよそって出すので、お客への安心感やライブ感に欠けている店が多いと感じました。また、見た目からもヘルシー感があまりないことを感じました。
しかし、カレーが茶色くてとろっとしているのは、野菜を炒めてスパイスと煮込んだもので、本来、カレーは野菜を食べるヘルシーな料理なはず。そこで、胃にもたれないように脂を減らして、調理の順番も入れ替えて、本来は最初に行なう“炒める工程”をお客様に見せるような今のスタイルに編み出したのです。つまり、煮込むカレーではなく、注文が入ってから野菜を炒め、そこにカレーソースを加えて軽く煮て、グツグツ煮えた状態で提供するのです。こうした斬新な発想は、飲食経験がないからこそできたのだと思います。
来店客の6割が注文する「1日分の野菜カレー」がヒット!
飲食業界は奥が深いけれど、同時に敷居が低いとも感じてオープンしました。が、開業当初は閑古鳥が鳴いていて…。それまで数100億円というプロジェクトに関わってきたので、一生懸命作って1日の売上がようやく数万円で、さらに月末には材料費をねん出するのにもひと苦労…、という状況にはずいぶん胃の痛い思いをしました。
開業後1年くらいすると、当初の「アメリカで成功する」という大それた夢は一旦しまい込み、“地に足のついた商売をしよう”、“常連さんを大事にしよう”と考え方が変わってきました。そんなときに開発したのが、いま一番人気の「1日分の野菜カレー」です。
もともとは雑誌の企画でつくったカレーがきっかけで、彩りよく野菜をたくさん入れたらちょうど成人が1日に必要な量だったんです。そのままのネーミングにしたのがわかりやすかったんでしょうね。その頃から店も軌道にのってきて、「意外なところに自分の居場所があった」と感じるようになりました。会社でいくら大きな仕事をしていても、それは自分ではなくて、しょってる(大企業の)看板のおかげなんですよね。
そんなことを考えている時に、池袋の駅ナカへの出店依頼をいただき、しまっていた夢がぽろっと出てきたような(笑)。店を増やす意志はなかったのですが、駅ナカという多くの人が集まる場所に可能性を感じたので快諾しました。お陰様で、代々木店は10坪・18席で平均月商340万円をコンスタントに売っており、7割がリピーターのお客様です。
池袋店は駅の中にも関わらず、行列もできるほど好調な出だしです。来年3月には品川駅にもオープン予定ですが、僕自身は今後も代々木店の主として、支えてくれる地元のお客さまに喜んでもらえるように続けていきたいです。そして、アメリカも、いつか行きたいっ!(笑)。
開業後1年くらいすると、当初の「アメリカで成功する」という大それた夢は一旦しまい込み、“地に足のついた商売をしよう”、“常連さんを大事にしよう”と考え方が変わってきました。そんなときに開発したのが、いま一番人気の「1日分の野菜カレー」です。
もともとは雑誌の企画でつくったカレーがきっかけで、彩りよく野菜をたくさん入れたらちょうど成人が1日に必要な量だったんです。そのままのネーミングにしたのがわかりやすかったんでしょうね。その頃から店も軌道にのってきて、「意外なところに自分の居場所があった」と感じるようになりました。会社でいくら大きな仕事をしていても、それは自分ではなくて、しょってる(大企業の)看板のおかげなんですよね。
そんなことを考えている時に、池袋の駅ナカへの出店依頼をいただき、しまっていた夢がぽろっと出てきたような(笑)。店を増やす意志はなかったのですが、駅ナカという多くの人が集まる場所に可能性を感じたので快諾しました。お陰様で、代々木店は10坪・18席で平均月商340万円をコンスタントに売っており、7割がリピーターのお客様です。
池袋店は駅の中にも関わらず、行列もできるほど好調な出だしです。来年3月には品川駅にもオープン予定ですが、僕自身は今後も代々木店の主として、支えてくれる地元のお客さまに喜んでもらえるように続けていきたいです。そして、アメリカも、いつか行きたいっ!(笑)。
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