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第55回 リゾットカレースタンダード 店主・高城直弥氏

東京・世田谷の閑静な住宅街にありながら、わずか4坪で月商200万以上を売り上げる繁盛店「世田谷バル」。店主の高城直弥氏は、“フードもワインも500円均一”、“料理は3分以内提供がモットー”など、型破りの手法で“マイクロ立ち飲みバル”という新たな業態を開拓。2011年5月には、2号店の「リゾットカレースタンダード」を渋谷に開業し、こちらも連日2〜3回転と絶好調。バルブームが過熱する中で、変わらず高い集客力を誇る高城氏の経営手腕とは…。

プロフィール

1980年滋賀県生まれ。大阪あべの 辻調理師専門学校卒業後、ホテルやイタリア料理店を経て2008年4月、27歳で「世田谷バル」をオープン。誰もが「失敗する」と心配した住宅街立地で大成功を収め、メディア取材も殺到する人気店に。2号店の「リゾットカレースタンダード」では、ユニークな「リゾットカレー」を看板商品にさらなる話題を呼んでいる。

リンク

http://www.risottocurry.com/

高城直弥氏 リゾットカレースタンダード
住所/東京都渋谷区桜丘町16-8 桜丘ビルB1F
TEL/03-6416-3604
営業時間/18時〜翌2時(翌1時 LO)
定休日/日曜
開業資金はわずか230万!住宅街で開花した4坪の立ち飲みバル
リゾットカレースタンダード
専門学校卒業後、最初は大手のリゾートホテルに就職しました。しかし、ホテルの厨房は大量調理が基本で、個人の調理技術を上げるのは難しいと感じ、1年半ほどで辞めて街場のレストランで4年ほど働きました。その後、1年間ピースボードに乗って料理や接客の仕事をしながら世界中を巡ったのですが、これがとてもいい経験でした。

いろいろな国を見て改めて日本のレストランのレベルの高さを実感しましたし、船上でいろいろな局面を乗り越えてきたので、いい意味で肝が据わった部分もあります。帰国したらすぐに独立したいという気持ちになっていたので、すぐに物件を探し始めました。
リゾットカレースタンダード2
僕はイタリアン出身なので、「ワインをメインに売りたい」ということだけは決めていて、ワインを飲んでくれそうな人が住んでいるエリアを考えたら世田谷区かなと(笑)。ちょうどその頃、都内を中心に立ち飲みブームが起こっていたので、立ち飲みのワインバルにして、ワインもフードも500円均一で出したら面白いのでは?と考えました。

当時はとにかくお金がなかったので、低予算で開業するために物件は駅から離れた住宅街の路面店で、1人で営業できる5坪くらいの規模で探しました。実際に決めた物件は、わずか4坪。開業コストを最小限に抑えるためガスは引かず、厨房機器はIH調理器とオーブンレンジ、トースターのみ。水道と電気工事は知人に依頼し、内装はカウンターの台や壁の塗装などもすべて手づくりで仕上げました。
原価をかけたお値打ち料理を、3分以内に提供
リゾットカレースタンダード3
開業資金や家賃を抑えた分、料理やワインでお客様に還元したいと考えているので、正直なところ原価はかなりかかっていますが(笑)、それが住宅街ならではのメリットだと考えています。料理は、「ワインに合うもので、とにかく待たせないこと」がモットー。パテやリエットなどパンに合うつまみから、煮込み料理やカツレツといったお腹にたまるメイン料理まで常時20品ほどを揃えていますが、いずれも“3分以内”の提供を目指しています。

またワインは、グラス500円、ボトル2500円均一の明瞭価格にしています。日常的に通ってもらえるようにグラスでも常時5〜6種類を揃えているので、飲み比べを楽しむお客様も多く、回転がよいため、つねによいコンディションで飲んでいただけています。

オープン後は最初の1週間こそ暇でしたが、もともと飲食店の少ない住宅街なので、近隣の人が興味をもって次々と訪れてくれたこともあり、すぐに忙しくなったのは幸運でした。結果的に、最初に来てくれたお客さんの多くが今も常連さんになってくれてお店を支えてくれています。
2号店で渋谷へ進出。瞬く間に、予約困難の人気店に!
リゾットカレースタンダード5
2店舗目を出したいという思いは2010年頃からあり、半年ほど物件を探したのですがなかなかちょうどいい場所が見つからなくて。現在の場所は知人の紹介で出会った物件で、内見したその場で即決!でした。

こちらは8坪あるのですべて着席で18席を用意していますが、料理やワインの値段は「世田谷バル」とまったく同じです。「世田谷バル」が色々なメディアに取り上げられたこともあり、「リゾットカレースタンダード」はお陰様でオープン当初から毎日2〜3回転しており、お断りすることも多いのが現状です。

店名にも掲げた看板商品「リゾットカレー」は、以前働いていたイタリア料理店で、先輩がまかないで作ってくれたメニューがきっかけです。パルメザンチーズの濃厚なリゾットに鶏のトマト煮込みのルーをかけた料理で、別々に食べても、一緒に食べてもおいしい。白いご飯ではなくリゾットなので、ワインのアテにもぴったりというわけです。
リゾットカレースタンダード4
これまではもっと店舗を展開したいという思いがあったのですが、最近はそれよりも従業員がもっと快適に働ける会社づくりに注力したいと考えるようになりました。飲食業界は他の業界に比べて賃金や労働時間などが厳しく、利益構造も低いのが現状です。同じ事業モデルで展開しても利益構造は変わらないので、結果的には現場で働く従業員の負担は減りません。

また、東京はトレンドもめまぐるしいですし、原材料の高騰も年々感じており、都内で10年続く店をやるのは奇跡に近いことだという危機感をもって日々営業に取り組んでいるのが実感です。

もちろん、僕の原点は飲食業ですからそこは大事にしながら他業種への参入も視野に入れ、最終的に従業員みんなが安心して働けるように会社を大きくしていきたい、というのがこれからの目標ですね。