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第56回 マーケティングセバスチャン株式会社 代表取締役・久積正道氏

2012年5月、マレーシアの上場食品メーカー、ブラヒム社が日本に上陸した。その立役者となったのが、マーケティングセバスチャン(株)の代表取締役、久積正道氏だ。同社は食に関する総合プロデュースを行う企業で、最近では海外メーカーとの取引も手がける。既存の枠にとらわれない新しい事業の進め方、積極的にフリーランスの人材を活用する理由など、躍進企業に育てた久積氏のモットーをうかがった。

プロフィール

1977年生まれ。中央大学大学院 戦略経営学科卒業。MBA/経営修士。2000年、伊藤忠商事系食品ベンチャー企業に入社し、事業の立ち上げメンバーとして活動。2007年、マーケティングセバスチャン株式会社を設立、翌年に売上高1億円を計上する。企業のスローガンは、“一人一人の才能を社会の価値に”。

リンク

http://www.mksjapan.com/

http://www.brahimsfoodjapan.com/

久積正道氏 本社所在地/東京都目黒区目黒2-6-14 Cells202
TEL/03-6303-1103
立派な設計図があっても、それを現実にしなければ意味がない。
マーケティングセバスチャン
弊社(マーケティングセバスチャン)は、食品に関する事業全般をサポートする会社です。具体的には、飲食店のメニュー開発や広報活動、食品関連企業の経営コンサルティング、食品の販売ルートの確立など、事業内容は多岐に渡ります。事業によっては、弊社の人材をクライアントに出向させ、ときには出資を行うこともあります。

マーケティングセバスチャン2
この不景気の時代、資本金や人材を投入して仕事をするのは、リスクが高いように感じるかもしれません。でも、せっかくコンサルティングを行い、いろんなご提案をしても、クライアントがそれを実現できなければ意味がないんです。立派な設計図だけあっても、家をちゃんと建てなければ現実にはならないでしょう。わが社もリスク負う形で事業を支援することで、お互いの真剣さや信用がより強くなり、思い描いていた夢が現実のものになる。私にとってはそれが一番大事なことです。

一方で弊社は、フリーランスの人たちと積極的に仕事を行っています。ここ数年、企業の人員削減の影響で、能力のある人材がフリーランスとして働くケースが増えています。必要なときに優秀な人材を集め、プロジェクトごとに適任者を任命していく。そうすれば、よりクオリティの高い仕事ができます。“一人一人の才能を社会の価値に”をスローガンに掲げる弊社では、このような人材登用を行っています。
モノそのものでは売れない。独自のアイデアで付加価値を付ける!
マーケティングセバスチャン3
さて、私は現在、30代まっただ中。はじめて飲食の事業を手がけたのは20代前半、大学3年生のころで、仕出し弁当を出す蕎麦店を経営しました。開店2年目に黒字にしたものの、最初はひどいものでしたね。

親戚に頼みこんで借りたお金と自分のバイトで貯めたお金、トータル700万円の資金でスタートしたのですが、あっという間に使い切ってしまい、1年後には資本金ゼロ円。でも、そこからです。いろいろ知恵を絞りまして、企業向けのオリジナル仕出し弁当の販売を始めました。

そのころ懐石のお弁当といえば5000円ぐらいの高級なものばかりでしたから、2000円台に価格を抑えたお手頃な和食弁当を作り、クライアントの企業様ごとの献立表をお弁当に付けて高級感を出しました。すると、ランチミーティング用に大量に注文が入るようになり、月々の利益がみるみるうちに100万円を突破。このアイデア弁当で、お店の経営がうまくいくようになりました。

クライアントが評価してくれたのは、お弁当そのものではなく、お弁当を通した弊社の独自のサービスでした。つまり、クライアントが欲しいのは、“モノではなく、事(コト)”。モノに付加価値を付けて、事(コト)にする大切さをこの経験から学びました。

大学卒業後に入社した商社のベンチャー企業でも、モノを事(コト)にして成功した例があります。今では当たり前になっていますが、実はインターネットカフェにフードビジネスを持ちこんだのは私です。インターネットカフェに合う料理を選び、誰でも作れるように調理法や盛り付け方をマニュアル化し、2日間の調理講習会をセットにしたパッケージを作成。この商品は自分でもびっくりするくらい注文が入りました。
私にとって仕事とは、“本質的な価値”を追求すること。
マーケティングセバスチャン5
私が仕事を決めるとき、常に自分に問いかけているのは「その商売に、本質的な価値があるのか」ということです。それが無いなら、一時的に商売がうまくいっても、長続きはしません。世の中が求めているもの、世の中に出すべきもの。それを見極めて、それをのばしていきたいんです。

2012年5月、マレーシアの老舗レトルト食品メーカー、ブラヒム社と提携を結び、「ブラヒム・フード・ジャパン」を設立しました。日本では、タイやシンガポールに比べて認知度の低いマレーシアですが、私は次のような3つの理由で決心しました。

1つ目は、商品の品質の高さ。私はレトルト事業をよく手がけるので分かるのですが、ブラヒムの味はレトルトとは思えない本格的な味で、具もたっぷり。そしておいしいこと。2つ目は、26年前、日本のレトルト食品の技術があったからこそ、同社が会社を設立できたという逸話。きっとこの会社は、日本との縁を大切にしたいはずだ、と心が動きました。
マーケティングセバスチャン4
そして3つ目は、人との出会い。マレーシア側のスタッフや協力してくれる人間がみな、志が高く、尊敬できる人で、この人たちと仕事がしたい、と心から思ったから。“本質的な価値”というのは、もしかしたら、そこに関わる人のことなのかもしれません。

私の夢は、“人それぞれの価値を社会の利益に還元していくこと”です。周りを見ると、自分らしく生きている人が少ないように思います。たしかに、好きなことをやって生きていけるほど、世の中は甘くない。でも誰しも、かならず何かしらの能力を持っています。弊社は、そういった人たちの才能と社会をつなぐ会社であり続けたいと思っています。